Kさんの相談例

 苦しい相談ですが似たような例は多々あります。
 会社を経営する39歳のご主人を持つ奥様からの相談でした。
 2年ほど前から会社の経営が悪化し、どうにも行きづまり状態から抜けきらないとのことでした。
 仕事をはじめて十二年になるそうです。初めて三年ぐらいはよかったのです。
 周期的に資金繰りの苦しさがやってきて、その都度駆け込みの融資を受けたり、突然紹介などで偶然お客が増えたり、信用保証協会の融資枠(事業主の方にはお分かりと思いますが、中小企業が小規模の銀行の融資を受けやすくする公共の保証人機関です。)が伸びたりでどうにか切り抜けてきました。
 ここ二年は悪化する一方で、ノンバンク(商工ローンのようなもの)はもとより、高利で小切手の買取まで手をつけていました。
 ノンバンクから借り入れをすると、いつの間にかあちこちの金融会社から、貸付のダイレクトメールがきて、銀行融資では間に合わず、さらにノンバンクのネットで決まられてる枠を超えると他のノンバンクではもう審査が通らなくなり、違法と知りながら高利な金融から借りるしか決済を行っていく方法がなくなるのです。
 既に240万の小切手を三軒の金融会社に切り、いずれも借りた元本は、いくつかの条件がつき、195万でした。そして240万全額が約定日までに返済できないときは、2週間ごとに40万の利息を追加しなければならず、既にどうにもならない状態でした。
 でもこの奥様は、経営の改善に希望をかけており、以前も新規開拓で救われてきたので、今度は方位による方法で新規開拓して改善しないかと相談してきたのです。
 この場合、非常に苦しく説得が難しいのですが、このご主人の年齢から言って、事業の好転と言う上昇機運に乗せる運命の転換は無理な時期にあるのです。
 九星気学の常識として、本命星が東北の艮宮に介在する年から、北の坎宮に入る三年は衰変から衰極にいたる時期で大きく衰運の時期になります。
 この衰運は九星の回る9年ごとにくるのですが、この年齢の衰運は特に経済的に苦しくなります。すべての人が失敗するわけではないのですが、新規事業や、拡張などを考えますと大きく失敗し挫折します。  要するに一番悪い時期にきているのです。調子のいいことを言って気休めの安心をしていただいても後でどうにもならなくなることはこの場合、10割中10割と言える状態です。
 この時期に幸運な好転を望むことは無理なことを説明し、この自体から無難に退却することをお勧めするのですが、そうなりますと大概の方が落胆しながらも、私との相談に見切りをつけ、ほかに活路を見出そうとしてしまうのです。
 この奥様は落胆しながらもすでに助からないことを覚悟していたようでした。より安全な方法で、この窮地を辛くも逃れることを相談する方向で納得しました。
 まず占う方位の行動を説明することの以前に、高利の融資先を出資法違反で弁護士を立て、強引に整理すること、保証協会の融資を元金据え置きを申し出ることを進めました。
 これは長く追加融資の可能性を絶たれるので渋りました。
 また弁護士を立て、高利の融資をつぶすには、銀行にすべてを知られてしまうと今後の付き合いが、きわめて不利になることを強く懸念していました。
 今までのほかの例を説明し、背水の陣を引くことを納得していただいた上で、この危機を少しでも無難に切りぬけるために方位を使うこと、この人のご主人の場合、このとき12月でしたが、月盤が七赤で北と西北、西南があいていました。
 この場合事情から西南をはずし、北と西北の、どちらの方位をを取るべきか、それぞれに卦を起こし、易をたててみることを進めました。
 それぞれに以下のような卦を得ました。
北に一月方位を取ってこの危機にどう作用するか
 天山遯 上爻(てんざんとん じょうこう)


 西北に一月方位を取ってこの危機どう作用するか。
 水地比 五爻(すいちひ ごこう)

この二つの比較ですがどちらも悪くないのです。
 でも易はこの場合その場の事を教えてくれてるに過ぎないのです。
 天山遯 上爻を普通易者は、ゆったりと逃れると解釈しますが。見当違いで逃れる、照準が外れて、その場を逃れるという場合もあるのです。北に行って逃れてもこのときこのご主人の方位は北が年月日を重ねて開いているわけではないのです。月の方位が北が吉であるだけで北に行っても、一度は元の家に戻らないとなりません。それならば、今西北に行き、この事態と対決し、来年4月に、北が年月日をそろえて吉になります。この時に完全に引っ越して事態から逃れ本人と家族を守るべきと考えました。
 西北に行った場合の水地比 五爻は 爻辞に「王様が狩をするに三法から獲物を追い詰め、前一方は開けておき、前方に逃げた獲物は追い詰めずに逃がす」とありますが、これを通常物事を八割で満足せよと解釈します、でもこの場合はまっすぐ逃れてよしと見ます。またいずれかに逃れる道があると見ます。でもこれだけで判断するには不充分なので、中筮法(六変筮法)で成り行きを取ってみることにしました。しかし両方ともあまり芳しくありませんでした。そこで西北に一月方位を取り、更に北に越しての成り行きで、もう一度取り直しました。
 以下のような結果を得ました。本卦の沢火革は物事が根本的に変わる事です。 之卦の天下同人は人と同じくする。人並みに無難を得るとします。

 この後弁護士を選び、弁護士が内容証明を送ると、二軒までは債券を放棄し、残る一軒も一度は小切手を交換にまわしてきましたが、依頼返却し、ごねながらも約面の三分の一を分割支払い無利息で事を収めました。その後北を取ってから従業員は、会社を助けるがごとく、自分の方から皆見切りをつけ辞めて行き、仕入先の支援を得られ、仕入先の下請けとして、当分の間奥さんと二人でやって行くことになりました。けっしてよい解決ではないと思われますが、ここ数年の倒産の状況から考えれば辛くもよしとすべきではないでしょうか。

これは1994年のお話です。

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